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【島根県スモール・ビジネス育成支援事業③】好きなことを突き詰め和紙職人に!伝統は変えていくもの!柔軟な考えのもと和紙を広めるべく、職人でありながら和紙加工品の製造販売も手がける「広瀬和紙 紙季漉」大東由季さんへインタビュー!

更新日:2024年5月20日

(インタビュー実施日:2023年6月14日)



”やりたいことには背を向けず、悩んだら誰かに相談すること”


■なぜ和紙職人を目指したのですか?


元々ものづくりに興味があり、地元の高校で自動車整備の勉強をしていました。しかし、私がイメージしていたものづくりとは違うと感じてしまいました。そのことを相談した先生からのアドバイスでものづくりができる学校を探し、伝統工芸を学ぶことのできる京都の専門学校を見つけました。その中で和紙の製法に興味を持つようになり、進学することを決意したのです。


”両親から言われた「やりたいことをせずに後悔するくらいだったらやりなさい」との言葉が後押しに”


■好きなことを仕事にしようと思った理由は何ですか?


卒業後は、福祉施設に勤務しました。そのきっかけは、そこで勤務していた指導員の方で紙すきができる方がいたこと、和紙産業が人手不足で働き手を探していたこと、そのような話を学校経由で聞いたからです。学校からの推薦もあり、採用されたのですが、福祉の仕事がメインであり、紙すきの仕事に集中することができませんでした。ここでは技術の向上は見込めないと感じ、思い切ってそこを退職し、職人として修業をすることを決めたのです。修業先の師匠からは、技術面だけではなく考え方にも感銘を受け、その流れで師匠の事業を継承させていただくことになりました。



”職人目線から商売人目線に変わることができた”


■スモール・ビジネスのアドバイザー派遣を受けていかがでしたか?


商売をする上での知識は勿論のこと、商売人としての視点を得ることができました。

元々職人なので、商売の知識がなく、商談などをするにも値段設定から交渉の仕方まで、全くわからない状況でした。

例えば、職人として商品の完成度を突き詰めた結果、自分が納得できる商品の品質に到達できていないという理由だけで、価格設定を低くしていました。しかし、 職人が作りたいものと、お客様が買いたいものには大きなギャップがあり、 それに見合った価格設定にすることが大切だというアドバイスを受け、その考え方が職人の私にとっては新鮮に感じました。まずは自分の商売で生計を立てられる程度の利益を出していくべきだ、といったアドバイスを受けることもでき、とても参考になりました。


”品質にこだわるならば、やはりその地域の原料で”


■その地域の原料を使用した方が良いものができるとお考えですか?

目的によって変わると思います。

例えば、書きやすさに特化させるなら地域の原料と、地域外の原料を組み合わせた方が良いものができます。それとは別に、何年も質を保てる紙、虫食いが来ない紙となると、品質が重要なため、地域の原料を使うという点は外せません。

国産の方が品質が良いという評価の根本にあるのは、外国産のものはすぐに虫がついてしまうためです。風土の違いによる要因なので、やはり国産の原料を使った和紙だと丈夫で長持ちさせられさせられます。




”伝統は時代に合わせて変えるもの”


■ビジネスを始めると職人としてのこだわりよりも、お客さんのニーズ優先になる場合があるかと思いますが、その点はどうお考えですか?


多くの方が紙和紙と言えば、半紙といったイメージがあるのが現状です。

和紙の良さをご存知で利用してくださる方は年配の方が多いです。幅広い年代の方に利用して頂かないと衰退していく一方なので、将来もこの産業を残していくためには、お客さんにもイメージを変えてもらう必要があるかと思います。

そのためには、伝統だけを重んじるのではなく、コースターなど今のライフスタイルにも合わせた手に取りやすいものを制作していく必要があります。また、それらを見てお客様自身でも材料として和紙を手にとっていただければ嬉しいです。

師匠からは自分がやりたくてもできなかった新しいジャンルにもどんどん挑戦しなさいと言われ、その考えが今に生きていると思います。

より良いものができるならば昔のやり方に拘らず、新しいやり方に変えても良いと思います。質を落とさないのであれば、効率や生産性の改善も同じです。


”常に物事をプラスに捉える事が大切”


■商売を始めて失敗したことはありますか?そんな時にどのようにモチベーションを保つのですか?

コロナ禍に開業したこともあり、販路拡大ができず、売り上げが伸び悩んでいるところが問題だと感じています。今は、アドバイザーなどに対し、売り上げを上げるためには、どういうやり方、どういう方向性が良いかといった相談をし、色々と動いている状況です。この厳しい状況下でも、状況を改善して、良い方向へ上げていくだけだと、プラスに思うようにしてますね。

また、厳しい状況というのを隠すのではなく、関係者に現状を話すようにしています。人に話をするということは、モチベーションを保つ上でも大切だと感じています。

商品に絶対の自信がある中で売れない理由は、私のやり方が悪いと思っているので、そこさえ改善すればプラスになっていくと希望を持っています。




”家族の応援が原動力”


■事業を始める上で悩んだことはありますか?


師匠から事業継承の話をいただいた際、事業を継承すべきか悩みましたが、器用な性格ではないので、他の仕事を今更しろと言われても、この紙すき以外に楽しんでできる仕事はないだろうと思ったこと、加えて、1回も挑戦せずに辞めてしまうのは何か違うだろうと思い、チャレンジすることにしました。

また、家族の応援もあったため、たとえ事業が傾いたとしても、家族が手助けをしてくれるという安心感もありました。


”伝統を後世に繋げていくこと”


■将来の夢はありますか?


一つは、この工房を地元の様々な年代の人にも来てもらいやすい場所にし、和紙を広めたいという目標があります。特産品の和紙であっても、意外と地元の人も馴染みがないので、そのような地元の人たちにも知ってもらいたいです。

二つ目は、私が卒業した専門学校の卒業生を雇用してあげられたらなと思っています。

工房のある古民家を買う際に、後継者を探し、ずっとここで誰かが工房を継承していく環境にしたいと、大家さんに大見えを切っちゃいました。後世にこの伝統を繋げていかないと、衰退していってしまうと思うので、後輩に繋げていくことは私の使命だと感じています。


”本気で取り組みさえすれば、道は拓くもの”


■スモール・ビジネスを考えている人へメッセージをお願いします。


大きく儲けたい思いのある人は、このスモール・ビジネスのモデルには向いていないと思いますが、生活に必要な収入を得て、好きなことをしたいという人には良い選択肢ではないかと思います。好きなことを仕事にできることは、単純に楽しいです。

和紙を製造する会社で勤める方が楽な部分もありますが、私は研究者気質の部分があるので、ニーズにどのように応えていくかを考えることが面白いと感じています。

また、何かを始める上では縁は大切だと思います。何か縁があったりチャンスがあったら、それを無駄にはぜず、すぐ行動に起こしていくと、それがまた良い縁に繋がっていくと思います。





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